マンガ三昧の夏休み?!〜読書バリアフリーの多様な世界〜

マンガ三昧の夏休みー読書バリアフリーの多様な世界

こんにちは、平林です。バタバタとやってきたイベントがひと段落,夏休みになったので振り返りをしようとこの記事を書き始めました。

読書バリアフリーのイベントへの登壇機会が増えたことで,日本のいろいろな場所にある図書館にいったり,読書に関するさまざまな活動をしている方に出会う機会をいただいています。特に2024年7月はわたしにとって読書バリアフリー月間でした。

読書バリアフリーと聞いてどんなことが思い浮かびますか?このブログを読んでくださる方の多くは「音声図書」や「マルチメディアデイジー図書」が頭に浮かぶかもしれません。耳からの読書についてもっと多くの方に知っていただきたいのはやまやまなのですが、子どもの読書について考える際にはこれだけでは十分でないと思います。子どもと本との出会いには、大人が読書をどのように捉えているのかや、街や学校の図書館がどのような場になっているのかが大きく影響します。

この夏のイベントを振り返りながら、読書バリアフリーについてつれづれに書いていきます。

札幌での出会い

札幌で開催された読書バリアフリーフォーラム北海道では北海道ブックシェアリングの荒井宏明さん・札幌市中央図書館の淺野隆夫さん,そしていつもお世話になっている読書工房の成松一郎さんとのパネルディスカッションが自分にとって大変有意義でした。図書館はコミュニティの重要なパーツ、その場所をどうやってみんなで作ったり,使ったり,守ったりしていくのか。その時にいつも忘れられている人はいないか。

シンポジウムの最後に淺野さんが紹介されたのが『集まる場所が必要だ〜孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」の社会学』という書籍です。わたしも以前この本を読んでコミュニティにおける図書館の役割を意識するようになりました。ぜひ読んでみてください。

前日の打ち合わせや当日のお昼の時間などにも情報交換させてもらい,翌日は教えてもらった札幌市図書・情報館Seesaw Booksに立ち寄ることができました。

札幌市図書・情報館

札幌市図書・情報館は,そのコンセプトが「はたらくをらくにする」ための場所。行ってみるまではその意味が十分にわかっていませんでしたが,行ってみると「なるほど,そういうことか」とコンセプトがよく理解できました。ここは社会の中でいろいろな形で働く人のための場所,新しい活動を作るための場所,心を自由にするための場所。

前日のイベントの際、札幌市図書・情報館の初代館長の淺野さんと読書工房の編集者 村上さんとお昼ご飯をたべながら,「マンガという学習メディア」についておしゃべりをしていました。これが7月のわたしの重要なテーマとなりました。札幌市図書・情報館を訪れた私のアンテナに響いたのは,『マンガって何?ーマンガでわかるマンガの疑問』という本でした。マンガの表現に関する紹介や世界に広がる日本のMANGAなど子どもたちと楽しく学ぶ活動に役立ちそうな内容です。家に帰って早速Amazonで購入しました。

SeesawBooks

SeesawBooksはシェルターに併設された小さな本屋さん。シェルターの運営を本屋さんで補い,本屋さんの収益を増やすために店内でソフトクリームなどの販売もしているという試みです。

ソフトクリーム、最高でした,ソフトクリームは本屋さんのレジで買います。食べるスペースは店内にあるカフェスペースと外に素敵な小さな庭にあるテラススペース。東京よりは随分涼しい札幌の空の下でソフトクリームが食べられます。

ソフトクリームでちょっとベタベタになった手を洗おうとトイレをお借りしました。トイレはシェルタースペースの中にあるので,少しシェルターの雰囲気が垣間見えました。社会の中で重要な活動をしている方がおられるんだなととても刺激にあんりました。

オンライン書店や電子書籍が普及したので本を買うのに不自由はありませんが、本と出会う場所が必要ですし、本に出会うには自分に新しい刺激を与えてくれる人との出会いが必要です。それを札幌への旅を通して感じました。

読書バリアフリーにおける多様なメディアの役割

7月下旬のまなプラゲストトークは「読書のバリアってどんなバリア?ー音声図書だけではない読書バリアフリーの世界ー」というテーマにしていました。北海道の読書バリアフリーフォーラムには読書工房さんが関わっておられるので,村上さんも来ておられて,多様なメディアに特にマンガについて話をしていました。この企画を立てた時から読書工房の村上さんに、読書は紙の本だけではない、いろいろなメディアがあるし,いろいろな出会い方があるということを話していただこうと思っていましたが,わたしが思っている以上に村上さんはマンガやドラマ,アニメに詳しいこれからの時代の”読書コンシェルジュ”だということがわかりました。そこで、セミナーの資料としておすすめのマンガリストを作っていただくお願いをしました。

セミナーの当日、村上さんは参加者の方の声をしっかり拾い上げて話を組み立てていきたいという理念をお持ちで,質問に丁寧に答えてくださいました。おすすめマンガリストも配布資料として参加者のみなさんへの素敵なお土産になったと思います。

村上さんに対して本の編集者という仕事をされているので子どもの頃から本を読むのが好きだったんだろうなと勝手なイメージを持っていましたが、そうではありませんでした。村上さんが大学時代に本に出会ったきっかけ、編集の道に進んでいくプロセスのお話も素敵なエピソードでした。

参加者の方の声をアンケートから紹介します。

村上さんの言葉の一つひとつが、そうそう、と納得のいくことの連続だった。お聞きしながら、二学期、こんなことができそう、とイメージが湧く時間だった。

読書バリアフリーとは何か、想像を超えたお話でした。 自分の子どもが本を読んでも理解ができなかったので、映画をみせて内容をイメージさせて、読書感想文を書いたことを思い出しました。 歴史や科学、生物の本を知りたい気持ちから読み続けることによって、読みスキルを身につけている子どももいます。周りの大人がいかに環境を整えるか、関われるかはとても大事なことだと感じました。 読書感想文が自由課題になり、取り組む子どもが少なくなっています。文章を読んだり書いたりする機会も減っているように思います。 とても貴重なお話をありがとうございました。

とてもとても有り難かったです。学齢期にいる為か、普段、カタカナや漢字、一文字一文字をどうやって身につけるかという事にフォーカスしがちですが、本当は、物語の面白さや学ぶ事の楽しさを子供に伝えたいのに、とはがゆく思っていました。その楽しさに触れた時の子どもの伸びは驚きます。具体的な本の紹介がとても有り難かったです。また、息子さん方への具体的なサポートのお話がとても為になりました。

自分自身にも、紙の本が最上位だという価値観が存在していたことに気がつきました。「メディアから情報を得る」とか「メディアを通して楽しむ」と考えれば、そのメディアには色々な種類があって、それぞれのメディアに特徴があるだけだと捉えることができました。 また紙がマジョリティであった期間が長いから、他のメディアがマイノリティとして価値を認められにくい現状があるのだと思いました。 素晴らしいコンテンツが色々あっても、サブカルとしてどこか過小評価されてしまうこともあるのではないかと思うので、紙以外のメディアの価値向上みたいなことも必要なんじゃないかと感じました。 一方で、村上さんがおっしゃっていたように紙の良さというものもあると思うので、色々なメディアを行ったり来たりできるような読書環境が作れるといいなと思いました。

このセミナー、読書バリアフリーというテーマのせいか他のテーマよりも申し込まれる方の数が少ない印象でしたが,参加された方の満足度は大変高かったです。より多くの方に知っていただきたい内容ですので,あとから配信という形でお届けしたいと思います。

読書のバリアってどんなバリア?音声図書だけではない読書バリアフリーの世界

https://peatix.com/event/4073579/

わたしも夏休みになったので村上さんにご紹介いただいたマンガを早速読んでみました。さまざまな分野のものをご紹介いただいたのですが、わたしが読んでみたいと思ったのは『ふしぎの国のバード』というマンガです。明治初頭に東京から蝦夷まで日本古来の生活を記録に残すことを目的に旅したイギリス人冒険家イザベラ・バードさんのお話。こんなマンガがあったとは。めちゃめちゃおもしろい。このマンガの出典は『日本奥地紀行』という本なんだそうです。これは出典も読んじゃいますね。

バードさんは日本に来る前にもいろいろなところを旅してそれを本に書いているようですし、日本の後も旅を続けていて、朝鮮半島にも行っているようです(『朝鮮紀行〜英国婦人の見た李朝末期』(講談社学術文庫)という本をAmazonさんがおすすめしてくれました)。バードさん(の本)といっしょに世界をみてまわったなら、世界の歴史・日本の歴史を知るきっかけにもなりますし、英語に触れるきっかけにもなりそうです。

と,このようにマンガを介して本に出会うわけです。村上さんのおかげで素敵な本に出会えました。

この本読んでみたいの先に、音声図書やKindleの音声読み上げがある。このように考えています。

子どもたちに読書の楽しさを伝えるには、まず大人が多様なメディアで読書を楽しむことが大切ではないかと思います。ぜひ、大人もマンガを読んだり、耳で聞く読書をしたりしてみてください。

小説を読む,映画を見る,ドラマを見る,アニメを見る,マンガを読む,ゲームをする,楽しみ方はほんとに多様です。このテーマでの探究はまだまだ続きそうです。

そして,本を読んだ後、感想を人と分かち合う方法もまた多様にあります。読書感想文というと作文用紙に手書きが学校の定番で,子供たちには大変不人気ですが,もっと別のやり方があるはず。このテーマもあらためて取り上げてみたいです。

それでは,夏休みの方もそうでない方も毎日暑いのでご自愛ください。

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