こんにちは、平林です。生成AIの進化のスピードがものすごいですね。コンピューターのプログラムを書くコーディングができなくても、AIとの対話を通じてシステムやアプリの制作ができる時代になりました(バイブコーディングといいます)。
もくじ
GIGAスクール構想時代の教育の課題
読み書きに困りのある子どものサポートをしていると、ぶつかる壁があります。それは、GIGAスクール端末にアプリが自由に入れられないという課題です。特にChromebookの拡張機能は、Googleアカウントに紐づけて、個人が自由に機能を追加するものなので、学校での運用と相性がよくありません。
そんな中でGIGA端末用には教育系のアプリケーション(たとえば、ロイロノートやミライシードなど)が開発され、それを導入した自治体では、そのアプリケーションは多く活用されています。しかし、それらは一般のアプリケーションではないため、身近にあるテクノロジーとはならず、自宅の端末や卒業後のツールとして、それを利用するノウハウが子どもの中に蓄積されていないように感じます。
また、学校での端末活用が、特定の場面で、先生の指示の元に使うということが定着しているようで、自分にはこれが必要だから、その機能を探して使うという姿勢を持ちにくいようです。
例えば、子どもとマインドマップツールを使ったアクティビティをするとき、子どもからは「このアプリに似たものを学校で使っているけれど、それと使い方が違うので使いにくい」という声が聞かれます。いろいろボタンを押して操作してみれば、どのアプリも大きくは変わらないのですが、「決まった使い方がある」という前提があるようです。
アプリケーションを「〇〇するためのツール」と一つの機能として捉えるのではなく、
このツールでこれができるんだったら、こういうときにも使えそうだと
自分で考えて、自分に合わせて使ってほしい。
それが、わたしの願いです。
AIは、自分で道具を作るためのツールになる
与えられた道具を決まった使い方でなぞるのではなく、必要に合わせて道具のほうを変えられたら——そう考えていた矢先に、大きな変化が起きました。
プログラミングの専門家でなくても、AI(私はClaudeを使っています)と対話しながら、自分の欲しい道具を形にできるようになりました。私自身、コードを一行ずつ書ける人間ではありません。それでも「こういう人が、こういう場面で、こう困っている。だからこういう道具がほしい」と説明し続けることで、実際に動くツールが生まれます。
ここで伝えたいのは、「みんなプログラマーになろう」という話ではありません。大事なのは、自分に必要なものを一番よく知っている本人が、自分の道具を作れる時代になった、ということ。とくにアクセシビリティの分野では、これはとても大きな変化だと感じています。当事者や、すぐそばで支える人に必要な機能を、そのまま設計に反映できます。
私が作った2つのツールを、具体例として紹介します。どちらもインストール不要で、ブラウザでURLを開くだけで使えるウェブアプリにしました。アプリを自由に入れられないGIGA端末でも、ブラウザさえあれば使えます。
① ピタッとレンズ ──スキャンした本を「読み上げられるPDF」に
https://pitatto-lens.netlify.app
このウェブアプリは、スキャンした資料のPDFや写真を、縦書きにも強い日本語OCRで読み取り、検索・コピー・読み上げができる透明テキスト付きPDF・ePub・見出し付きWordに書き出せます。
紙の本をスキャンしただけのPDFは、ただの「画像」です。文字として認識されていないので、読み上げソフトは一文字も読んでくれません。そこで文字認識(OCR)が必要になるのですが、日本語の縦書き・古い本・ルビつきの文章を、正しい読み順で認識してくれるものがなかなかありませんでした。
そんなニーズを抱えたまま、いろいろとOCRを試してきたのですが、あるとき、国立国会図書館がNDLOCR-LiteというOCRを公開したというニュースを目にし、さらにその技術を活用したNDLOCR-Lite Web を橋本雄太さん(国立歴史民俗博物館、国立国会図書館)が制作して公開していることを知りました。試してみたところ、まさに探していた通り、それらを正しい読み順で読み取ってくれる素晴らしいものでした。
橋本雄太さんが公開されている優れた縦書きOCR(NDLOCR-Lite Web)はソースが公開されており、改変可能ということが示されていましたので、かねてから欲していた機能をClaudeに頼んで追加しました。
- 認識した文字を透明なテキストとして元のレイアウトの上に重ねるので、見た目はそのまま・読み上げだけできる
- 縦書きの行が一文字ずつバラバラに読まれてしまう不具合を直し、正しい行・正しい順番で読めるように編集する
- 認識が怪しい箇所に⚠️マークを出して、人が見直しやすくする
「レイアウトを保ったまま読み上げたい」というのは、図や写真の位置、「どこに何が書いてあったか」という空間の手がかりが、読み書きに困りのある人にとってとても重要な機能です。
「少々誤りがあってもよいのですぐに読み上げたい」時もあれば、テスト問題のように「少し手間がかかっても良いので正確に認識させたい」といった両方のニーズをカバーできるものにしました。
② とんとんリーダー ──縦書きを、行をなぞりながら読み上げる
https://tonton-reader.netlify.app
2つ目は、その読み上げ用PDFを快適に音声化して読むためのPDFリーダーです。
お手本にしたのは、海外製のNaturalReaderという読み上げアプリ。ウェブアプリとして長年使われており、わたしも読み書きサポートをはじめた当初からおそらく15年以上お世話になってきたものです。最近のアップデートで、読むことのできる場所にはマウスカーソルをホバーすると色がつき、そのままクリックして読み上げができること、そして読み上げているテキストは、画面下に別画面で見やすく表示され、ハイライトもされます。これは読みにくい方にとってとても使いやすいと感じていました。
けれど、NaturalReaderは英語や日本語の横書きは快適に読めるのですが、日本語の縦書きが苦手で、見出しや一行目を読み飛ばしてしまい、使えませんでした。「このNaturalReaderの体験を、日本語の縦書きでも実現したい」と思って作ったのが、とんとんリーダーです。
①の読み上げ用OCRで透明テキスト付きPDFを作っておいて、それを読み込ませれば、読み上げられるところを視覚的に見ながら、文字列をクリックして読み上げるということができます。アプリの名称を「とんとんリーダー」としたのは、子どもたちに何ができるのかを直感的に理解してほしかったからです。子どもが使うGIGA端末は、画面を触って操作できるタブレットパソコンなので、読みたい文章を「トン」とタップすれば読み上げられます。
- 読んでいる行に色がつき、画面下に字幕(CCキャプション)が出る
- 読みたい行をタップすれば、そこから読み始める
- 子どもが一人でも使えるよう、ボタンは大きく、操作はシンプルに
ウェブアプリですので、iPad/Windows/Chromebookと端末を問わず、子どもたちが使えるようにと制作しました。
「探す」から「作る」へ
この2つは、どちらも「売っていなかったから、自分で作った」道具です。売っていたら買った方が良い・製作者に制作を続けてもらうためにも買いたいですし、アプリケーションが自由に入れられるならば、使えるツールの選択肢は広がります。だから、まずは「探す」ことが大切。でも、ぴったりのものが常に売っているわけではありません。そこで、「作る」というフェーズに足を踏み入れます。
大事なのは、こうして自分で作れるようになったのは私だけではない、ということ。AIを道具にすれば、困りごとを抱える本人も、支える人も、先生も、それぞれの「ちょうどいい道具」を作れるのです。みんながツールを作って公開していったら、もっとよい読み書きの道具が生み出されると思います。
これから、世の中の方々がAIで作った/AIを活かしたウェブアプリを見つけたら、このブログで紹介していきたいと思います。今回はその第一弾として、1つ紹介します。
おすすめの外部ツール:ふりがなメーカー(制作:E-edu さん)
先日、漢字にルビを振るウェブアプリ「ふりがなメーカー」を作ってくださった方がいました。入力した文章の漢字に、ふりがな(ルビ)を自動でふってくれるウェブアプリです。読み書きに困りのある子どもの教材づくりはもちろん、テストやプリントを作るときにもとても便利で、テストを作る立場にある学校の先生方にも早速紹介しています。これもインストール不要で、ブラウザでURLを開くだけで使えます。
わたしも、このふりがなメーカーに触発されて、自分でもツールを作ってみたわけです。「困っている人のそばにいる人が、必要な道具を自分で形にする」——その輪が広がっていったらいいなと思っています。
※ 外部ツールの情報・リンクは紹介した時点(2026年6月時点)のものです。サービスの変更・終了で使えなくなることがあります。
Chromebook講座のお知らせ

📣 2026年7月5日のChromebook講座では、AIで制作したツールを組み込んだChromebookの活用方法を提案する予定です。
https://5yearstimechromebook.peatix.com/

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