こんにちは,平林です。新学期ですね。
最近,読み書きが苦手な子どもたちが,紙と鉛筆の代わりにタブレットPCを使うことで学びやすくなるということが知られるようになってきました。
これには,法制度の整備と教育へのICT環境の整備の2つの流れが影響しているように思います。
法制度については,2013年8月に成立し,2016年4月から施行されている障害者差別解消法によって公立学校においても障害のある児童生徒への差別的取り扱いの禁止と合理的配慮の提供が義務付けられています。
これに伴って,高校入試・大学入試における障害のある生徒への配慮は年々増えています。
また,GIGAスクール構想の推進によって全国の学校にタブレットPCを整備する流れがあり,教育へのICT環境の整備も進んでいますね。
その一方で,学校の教室において一人の子どもだけが周囲とは異なる方法で学ぶ際,本人との対話に基づき,まずできることに取り組み,その方法がどうだったのか見直しをしながら合理的配慮の提供を柔軟に進めていくことや,
周囲とは異なる方法で学ぶ際に必要となるルールに一部例外を設けるといった柔軟な対応をすることが学校現場ではなかなか進んでいかないという現状があります。
建設的な対話を進め,トライアルアンドエラーで配慮を動かしながら本人に合ったものを見つけていくためのポイントはどこにあるんだろう?
わたしの現在の関心はこの点にあります。
読み書きが苦手な子どもが自分に合った学び方で学ぶことを実現していくための,キーワードは「ICT活用✖️社会モデル」と「建設的対話」ではないでしょうか。
私事ですが,3月末で東京大学先端科学技術研究センターを退職し,学びプラネット合同会社の代表としてがんばっていくことになりました。会社として指導者の育成に取り組みながら,研究の方は東京大学のバリアフリー教育開発研究センターの方に籍を置かせていただき,教育学研究員として腰を落ち着けて進めていくつもりです。
障害の社会モデルについては4月のセミナーでも一緒に話してくれるバリアフリー教育開発研究センターの飯野由里子さんがレデックス通信に書かれている4つの連載記事がおすすめです。
ある会議に、英語の話せない日本語ネイティブのAさんと、日本語の話せない英語ネイティブのBさんがいるとしましょう。この二人のうち、どちらが「言葉の壁(バリア)」を経験すると思いますか?
この問いに対し、みなさんの多くは「この二人がどのような場に置かれているのかによって、答えは違ってくる」ということに気づくでしょう。
まさに「合理的配慮の誤解を解く鍵は社会モデルにある」!
学校でさまざまに異なる子どもたちが自分に合った学び方を選ぶための鍵も社会モデルにある!
子どもたちが学びにくくなっている要因について,その子どもの特性にばかり目を向けるのではなく,多くの人のあたりまえによって作られている周りの環境や仕組みといった要因に目を向けることで,子どもが自分で決めることを支え,未来ではなく今の学びが保障されるのではないかと思います。
そして,現在,飯野さんと取り組んでいるのが「読み書き障害」・「合理的配慮」・「建設的対話」をキーワードとする科研研究です。読み書きに苦手さのある子どもが学校でICTを使うとき,合理的配慮の提供においてどのような対話が行われているのか,そして行われていないのかについてのヒアリング調査を行っています。
ヒアリング調査をもとに,子どもと学校との対話がうまく進んでいるケースとそうでないケースではどんなところに違いがあるのかを分析しているところです。
ヒアリング研究から明らかになってきたことについてもセミナーで紹介できたらと思っています。
さっそく4月は,合理的配慮を障害の「社会モデル」で理解することに焦点をあてた基礎セミナーを行います。
2020年11月に「ICT活用×社会モデル」の初めてのセミナーを行いました。今回はそれをさらにブラッシュアップし,学校での対話プロセスについて深めていくセミナーになる予定です。
もし,よろしければいらしてください。
以前は,リアルタイムとあとから配信(アーカイブ配信)を分けていましたが,分けるのはやめて,全員の方にリアルタイムの案内と1ヶ月のアーカイブ配信を行います。