テストを音声読み上げを使って受けるには①〜小学校のカラーテスト

小学校のカラーテストを音声で読みあげる

こんにちは,平林です。

「学校のテストを音声読み上げで受けるにはどうしたらいい?」をいう質問を受けることがたびたびあります。

テストの問題文をICT機器の音声読み上げ機能を使って読み上げるためには,テストの内容をテキスト(文字情報)にする(=電子化する)必要があります。この電子化は,元のテスト問題がどのような媒体なのかによって電子化できるか(しやすいか),否か(しにくいか)が異なります。

先生がワープロソフトを使って作っているテストを電子化するのは簡単ですが,手書きで作っていたり,イラストやグラフを切り貼りして作っていたりする場合には,文字の部分をテキスト(文字情報)に起こさなければなりません。

また,テストの販売業者が作成しているものは,元データを一般的に入手することができないため電子化することが困難です。

元データがないものについては,その文章部分の写真を撮影し,その写真から文字情報を認識させることもできます。画像から文字情報を抽出する技術は光学文字認識(OCR:Optical Character Recognition)といいます。

ただ,このOCRはそう簡単にはいきません。なぜなら,テストの問題文中には下線が引いてあったり,問題番号が書かれていたり,文章の一部だけを空白にしてあったり,漢字に振り仮名がついていたりすることが,画像から文字を正確に認識することの邪魔をします。

また,テストの問題文章にOCRをかけて文字を認識させたとしても,その認識結果には誤りが含まれるため,確認をして誤りを修正しなければなりません。普段子どもたちが授業で読むプリントとテストとでは,情報を提供するまでの時間と情報の正確さの優先順位が異なります。普段のプリントであれば,誤りのない情報が得られることよりも,先生が配るのと同じタイミングで情報が得られることが重要です。しかし,テストの問題文となれば情報の正確性の優先順位は高くなります。

それでは,まずは小学校のテストを例にして具体的に考えてみましょう。

小学校のテスト

小学校のテストはその多くが業者が作成している通称「カラーテスト」です。先ほど述べたように業者テストは元データを入手することができません。

わたしも過去に,なんとか電子化できないかといろいろ試しました。例えば,国語であれば,上半分が文章で,下半分が設問と回答欄です。まずは,上半分の文章をよめるようにしよう,というわけで

  • まず上半分だけを折り曲げてコピーする
  • それから下線や問題番号,振り仮名を修正ペンで消す
  • 再度コピーする
  • そのコピーをスキャナにとおして,文字認識をかける
  • 認識結果を確認して,誤りを修正する

このようになかなかに大変です。そして,なんとか文章の電子化ができても,そのあと,下線や記号をどのように表すか,視覚的な要素のある設問をどのように表すのかと課題も残ります。

パソコンに専用の文字認識ソフトを入れるということもできます。専用ソフトでは,文字認識を行う領域をあらかじめ設定し,その領域に縦書き・横書き・図形といった属性を与えて認識させることで,認識率が向上します。

とはいえ,これもまた結構大変。小学校のテストは文字数がそこまで多くないので,文字認識をさせるのではなくて,全部の文章をワープロで打ち込んだ方が速いのではないかという気がしてきます。

というわけで,私はこれら方法で小学校のカラーテストを電子化することは現実的ではないと判断しました。

心の声「誰かが隣で読めばいいじゃないか。え,だれもいない?人手不足?だったら私が読みましょうか?携帯電話の番号書きましょうか?いつでも電話してきてください。テレビ電話でテストを画面に写してもらったら読めますから。。。」

テストの電子化作業をしているとこの心の声のような気持ちになってきます。要するにあまりうまくいかないです。そして実際,隣で人が読むのが最も合理的で現実的です。

隣でテストの文章を人が読む方法のことを「代読」といいます。テストを受ける人が指示したところを代読者が読みます。例えば,国語で漢字の読み方問題のように読み上げてしまうと答えがわかってしまう,そういう問題は出題者があらかじめ蛍光マーカーなどで印をして代読者が読まないようにします。代読であれば,どんなレイアウトの文章であっても,下線があっても,空白があっても大丈夫です。

それでは,代読にデメリットはあるでしょうか。実は,たくさんあります。代読をしてもらったことのない方には,ぜひ一度,隣の人にテストの内容を読んでもらいながらテストを受けてみることをおすすめします。

実際にテストで代読で受けている子どもに聞くと,挙がってくるデメリットは以下のものです。

  • 読んでもらうと時間がかかり全部読んでもらうには時間が足りない
  • 隣に大人がいると緊張する
  • テストでは毎時間,違う先生が来て代読者になってくれるのだけれど代読者の読み方や声によって聞き取りやすさが違う
  • もう一度読んで欲しかったり,速度を調整したくても遠慮してしまう

そうだよね。。。

では,このようなデメリットを最小にするにはどんな工夫ができるでしょうか。適切なかたまりごとに録音し,その録音を手軽に聞き返せるシステムを使うのがよいでしょう。

たとえば,以前の記事「音声教材(電子教科書)を使い分けよう!」で紹介した「ペンでタッチすると読み上げる音声付き教科書」(茨城大学)があります。

この音声ペンには録音用のシールが付属しています。このシールに音声を録音することができ,ペンでタッチするとその録音が再生されるのです。これを使えば,カラーテストの適当な分量のところにシールを貼り,一度大人がそこの文章を読み上げて録音すれば,あとは子どもが自分のペースで読み上げ速度を調整したり,読み返しをしたりしてテストが受けられます。

ペンだけでは買えないのですか?とも聞かれます。

この「ペンでタッチすると読み上げる音声付き教科書」を申請できるのは紙の教科書が読みにくい小中学生だけなので(つまり,大人は申請できません),通級指導教室などに導入したい場合は,VOCA-PEN(ボカペン)というペンがおすすめです。

https://www.addplus.jp/product/261

シールに音声が吹き込めるというのはなかなか楽しいですよね。ここは,ぜひ勉強につかうだけではなくて,いろいろな遊びに展開させたいところ。ある小学生にいろいろ録音してみると楽しいよと音声ペンと紹介したところ「ガンダムの主題歌を録音して壁に貼ります」と教えてくれました。このような遊びを通して聞き返すという習慣づけを生活の中に取り入れることができます。

ぜひ,やってみてください。

次回は中学校のテストについて書きたいと思います。

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